interview

Interview インタビュー

お客様と社員を大切にする経営で
サービス力で世界一のIT企業を目指す

社名 株式会社 アイディーエス
事業内容 システム開発、システムエンジニアリング、AWS環境構築などの各種ITサービス提供
設立 1996年12月
資本金 1,000万円
従業員数 113名(2018年6月現在)
代表者 代表取締役社長 中野 貴志
URL https://www.ids.co.jp/

NHK総合「おはよう日本」(2018年12月10日放送)で、社内コミュニケーション活性化でユニークな取り組みをするIT企業として紹介された東京・田町の株式会社アイディーエスを訪問してきました。
中野社長のお客様や社員を価値創造の起点と考えて「サービス力で世界一を目指す」という経営理念と愚直なまでの実践についてお話を伺いました。

NHKニュース「おはよう日本」の番組動画はこちら
https://www.nhk.or.jp/ohayou/biz/20181210/index.html

── 技術力が競争力と考えられがちなIT業界にあって、御社がサービス力で世界一のIT企業を目指すことになったきっかけは何だったのでしょうか?

わが社は、23年前に先代社長が、当初、大規模システム構築の最上流のコンサルティングだけを行う会社として創業し、私は、一社員として入社しました。いまから12年前、先代社長が急逝されたことで、当時、ナンバー2だった私が会社の経営を引き継ぐことになったのです。私が代表を引き継いだ当時は、わが社はとても厳しい経営状況でした。当初の1年くらいは経営再建に奔走する厳しい日々が続きました。
経営再建を進める中で、私は、今後、50年、100年とわが社が継続的に発展していくために、どうするのが良いのかを考え続けていました。そこで、最初に思いついたことは、当時の社会現象にもなっていた低価格戦略でした。しかし、これは、IT業界のコスト構造を考えると、社員の人件費を圧縮する方向にいくことになるため、社員を幸せにすることはできないと考えて選択肢ではないと思いました。そして、次に考えたことは技術力で勝負することです。IT業界の技術革新のスピードは速く、また海外から新しい技術がもたらされるため英語力の勝負になりますので、これも違うなと思ったのです。そのような中で、行き着いた答えが、技術力が勝負という業界にあって敢えて、「顧客満足(CS)を上げていくことで成長するIT企業」を作れないかということでした。

──顧客満足(CS)で勝負すると考えられた背景は何だったのでしょうか?

私が社長になる前の話ですが、ある時、大きな取引先の情報システム部長に呼び出されて、こんなことを言われたのです。「アイディーエスさんは、高いし、パートナーに丸投げしているだけで、何もやっていない。アイディーエスさんを通さずに、パートナー会社と直接やりたい」と。その時、私は、ビジネスのスマートさよりも、お客様の傍で自分たちが手を動かして汗を流すことこそが大切だと痛感したのです。その後、そのお客様とは取引がなくなり、他にも同じようなことが何件か相次いで起きていました。そして、私は、この問題の打開策を見出そうと、先代社長とは随分議論をしたのですが、価値観が合わず、改革を実現することはできませんでした。
そのような中で、私が社長になって一番最初に大きく変えたことは、外部のパートナーに丸投げしていたシステム開発をすべて社内に取り込んで、自分たちで汗を流して仕事をするということでした。しっかりとお客さまと向き合っていきたい。それでいて、しっかりと業績も上げる強いIT企業を作ることを決意したのです。
こうした考えで、わが社は、会社の在り方を大きく改革し、結果的に利益率も改善して危急存亡の危機を逃れ、会社を成長軌道に乗せることができたのです。

──社長が代わって、社風で一番変わったことは何でしたか?

私が社長になってからは、社内にプログラムを作る仕事を取り込むことになりましたので、とにかく仕事が大変になりました。以前のように、受注した仕事を外部に丸投げして涼しい顔をしていたのに比べると、残業も増え、体力勝負となり、本当に社員は大変になりました。それでも、「大変だけれども楽しい」という、そんな実感を持って社員が働ける会社になってきたのではないかと思っています。
また、こうした変革は、社員同士の関係性にも変化を起こしました。それまでは、各自がコンサルタントとしてプロフェッショナルであるという考え方でしたので、社員同士が連携して仕事を進めることはありませんでした。しかし、プロジェクトで仕事を進めるようになったことで、社員同士の横のつながりが生まれ、社員同士の関係が強くなっていったのです。

──サービス力強化のために、会社として行った施策はありますか?

わが社では、エンジニアはサービスマンであると定義しています。皆で同じテーマに取り組んで、サービス力が向上することを何かやりたいと思い、2年前から、「サービス接遇検定」に取り組んでいます。これは、接客業向けの検定試験で、IT業界では、わが社以外には取り組んでいる会社はないと思います。私も1級を持っていますし、全社員の98%以上が2級を持っています。
サービスの基本はコミュニケーションですから、「ありがとう運動」や、不定期に全員参加で行う「あいさつ研修」等も行っています。

──サービス力を高めるために、社員のレベルアップをどのように行っていますか?

サービス力を強化していくためには、社員の意識を高めることが必要です。わが社では、長年、社員教育を行っていなかったのですが、4年前に社員のレベルアップの必要性を感じて、社員教育への投資を加速しました。それまでは、経営者として社員教育に、どれだけの投資対効果があるのかが疑心暗鬼なところがありました。しかし、やり始めて直ぐにわかったことは、社員教育ほど投資対効果が早く出るものはないということでした。
最初の1年目は、現職の管理職のマネジメント強化研修をやりました。そして、2年目以降は、次世代リーダー育成研修をやっています。また、社員と価値観をすり合わせていくことが重要で、これは、私が講師を務める「社長研修」で行っています。社長研修は、1回2時間の研修を月1回、6回コースで社員全員が受講する必要があります。

──効果が大きかった社員教育は、どのような内容でしたか?

管理職向けに行ったチームビルディング、MBO(目標管理)などのテクニカルな研修に効果がありました。しかし、最も大きな効果があったのは、私自身と管理職との間で価値観をすり合わせる研修でした。管理職は、権限というと、とかく、自分の好き勝手にやってよいと勘違いしがちです。しかし、それは、会社の方針にそったうえで、権限を行使するものでなくてはなりません。そこで、私自身が講師となり、管理職との価値観をすり合わせる研修を一人一人と向き合って行ったのです。その結果、管理職が会社の方針を理解した上で、その中で権限をもって、自分たちの力で問題解決に取り組み、部下たちのために環境を整えていくマインドが育まれていきました。これは、会社にとって、とても大きな成果となりました。

──管理職に部下とのコミュニケーションで注意して欲しい事は何ですか?

私は、管理職には、全員の部下について、直近の週末に何をしていたのかを把握して欲しいと言っています。そのために、2年前から近くの居酒屋と法人契約をして、会社のお金で全社員が飲み放題、食べ放題という制度を導入しています。元々は、中間管理職の経済的な負担を減らすための待遇改善ということで検討を始めたのですが、社員が一気に増えたタイミングでもあり、会社としてコミュニケーションをとる場所、環境を作ることが大切との思いから導入に踏み切ったのです。後輩社員は、先輩社員と飲みながら、多くのことを学ぶことができるものです。飲みの場では、技術のことは学べませんが、大人としての考え方などを先輩社員から学ぶ機会になればと期待しています。

── IT業界では、社員の離職が問題になっているようですが、御社ではいかがでしょうか?

わが社でも、社員の離職は決して少なくはありません。私は、この離職の問題を考えると、社員への日頃の教育が大事だと考えています。社員には、何の仕事をするのかよりも、何のために仕事をするのかを考えてほしいと思っています。目先の仕事に集中してプログラムを作ることばかりが仕事と考えるのではなく、ITが社会や人の生活にもたらす恩恵は多大なものがありますので、自分が何のために仕事をしているのかというマインドを持ってほしいのです。会社にとっての「何のために」は会社のビジョンであり、社員にとっての「何のために」は個々人のキャリアプランをしかっかりと持つことだと思います。
マネジャーは、社員が離職すると、欠員分を埋めるための対応で大変苦労します。私は、社員の成長こそが会社を強くすると考えていますので、マネジャーが部下の離職を恐れて弱気になることがないようにと言っています。

──顧客サービス向上というと、それで業績が上がるのかと言った反論をする人がいます。サービス力を高めることの効果についてどのようにお考えですか?

私は、顧客満足と業績の相関関係を検証することは、非常に重要なテーマだと思っています。わが社では、顧客満足度調査を定期的に行っており、管理部門がお客様を訪問してインタビュー調査を行っています。今年(2018年)は、約200件の改善テーマが出てきており、その一つ一つに取り組むことで、会社として強くなることが出来ています。また、顧客満足度調査では、改善点ばかりでなく、お客様から褒めて頂けるケースも多く、今後は、いかに自分たちがお客様から喜ばれる良い仕事をしたかを社員が知ることも大事だと考えています。
また、社員がお客様のためにを追求し過ぎることで、会社の業績とのバランスが崩れてしまっては本末転倒です。そこで、いかにサービス力向上と業績向上のバランスをとっていくのかは、今後の重要テーマと認識しています。

──最後に、今後、力を入れていきたいことは何ですか?

将来的には、より高次のサービスとして「サービス保証」に取り組んでいきたいと考えています。そして、従業員満足(ES)を上げることが、顧客満足(CS)を上げることにつながるとの考えから、社員一人一人が納得しつつ、皆が活躍できる環境整備をしていくことに取り組んでいます。

文責 稲葉直彦