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長時間労働を考える~安倍首相コメントを受けて~


3月26日付の日経新聞に、安倍首相の長時間労働是正への対策検討指示の記事がありました。

長時間労働の是正は、これからの少子高齢化問題の改善にとり重要とする政府見解です。

会社員時代、長時間労働を慢性的に行ってきた私自身の経験から思うことは、ふたつあります。

先ず、全体的な残業時間抑制は、スローガンを掲げて数値管理をすれば直ぐに目に見える効果がでます。これは、最もシンプルなやり方で、従業員の毎月の残業時間の上限を決めて、推移を見ながら、抑制を働きかけていけばよいのです。

しかしながら、長時間労働の是正には、更に深くて簡単には乗り越えられない壁があります。それは、長時間労働は、特定の人に偏る傾向があり、その人たちに長時間労働を止めてもらうことは想像以上に難しいということです。そして、ここに手を入れない限り、本質的な働き方の組織体質の改革には繋がらないのです。

それではなぜ、一部の人に長時間労働が偏るのでしょうか。

先ず、長時間労働を慢性的に行う人には、その人の人生における強い信念があります。それは、「今日やれることは今日やる。明日に引き伸ばさない。」「人よりも頑張る。諦めない。」…という幼少期から脳に埋め込まれた親の躾からくる信念です。そして、この信念は、長時間労働を美徳とする強い思い込みとして固定化していきます。こうした信念を持ち、周りから見ると頑張る長時間労働者は、「仕事が好きな人」とみられがちです。

次に、長時間労働者が、組織ぐるみで作られていく事がよくあります。つまり、長時間労働をする人の周囲、特にその上司が、その人の長時間労働に依存するといったケースです。上司は、「長時間労働はよくないからやめなさい」と言いながら、「明日の朝の会議までにこの資料をまとめるように」と言って、さっさと帰宅するというケースがこれに当たります。残された彼は、仕方なく、もしくは、ハリキッて徹夜をして、その仕事を仕上げるといった具合です。

こうした理由から、全体的な残業時間の短縮はできても、たった一人の長時間労働を止めさせるのは簡単ではないのです。現実には、こうした一部の慢性的な長時間労働者の中から、脳や心臓の疾患が出る事は少なくありません。

いままでは、この事実は問題だけれども、結局は残業時間の平均値の中に埋もれてしまい、問題視されることはまれでした。しかし、今後、法規制が強化されると、たった一人でもそういう社員がいれば労基署の立ち入り検査が行われることもありえます。そして、企業は予めこの問題に手を打たねばならなくなるのです。いかに、長時間労働を行う人とその上司を巻き込んで、慢性的な長時間労働を止める仕組みを組織内に作り、定着させていくかが重要です。

ところで、このような話になると、そのためには業務改善が必要だとか、生産性が落ちるとか…云々の反論が企業内では出てきそうです。しかし、先ずは、慢性的な長時間労働を止める決意をマネジメントが腹を括ってすることが大事だと、私は思います。

文責 稲葉直彦


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